コーネリアスのアルバム全曲感想もこれで3回目である。コーネリアスについてはなんとなくすべてのアルバムの感想をまとめておきたかったのでできる限りしていきたい。よってなんでこの時期にと言われるとそうなのだがまとめていく。
今までの感想集
ということで今回は2017年に発表された6枚目のアルバム”Mellow Waves”について書いていきたい。
全体通しての感想
約10年以上空いてリリースされたこのアルバム。少し背景の話をすると、前作"SENSUOUS"から約10年空いてのリリースになっている。このため前作からの所謂コーネリアスというサウンドではなかったのだ。
コーネリアスのアルバムのコンセプトは題名にあると思っているのだが今回もその例から漏れない。"Mellow Waves"。メロウさが引き立っている。
その中でメロウさと人間臭さという所に重心を置いている。今まででは考えにくいのだがそうなっている。まさに"Mellow Waves"である。
では一つ一つを書いていきたい。
アルバム全曲感想
1.あなたがいるなら
Cornelius 『あなたがいるなら』If You're Here
この曲はシングルカットされている。
そしてこの「あなたがいるなら」。最初に来た時に何か聞いたことのある、でも聞いたことのない音楽であると思った。
まずバスドラとスネアだけのフレーズがある。ただ単純かと思いきやそのあとに入る揺らいでいる旋律が来る。どこに重きを置いているのか、軸足が見当たらなくなる。ただそれはとても気持ちいいことに繋がっているのだ。
これがまさに"Mellow Waves"。究極このアルバムの醍醐味は6分に詰まっている。
そして小山田圭吾の歌声が入ってくるわけであるのだが歌詞が細切れに、しっかりと入ってくる。"Sensuous"でも行っていた文節を徹底的に分けるということを世襲しつつ人間らしさという今迄の彼の活動と離れているようなものにも接触している。
歌詞は坂本慎太郎氏(ex.ゆらゆら帝国)が書いている。また彼もものすごい個性ではあるもののここでは多く書くことはしない。ただ一つ確実に言えることがこの詩が二限らしさつまり不確実性を増すことに起因している。さらにギターソロも入っている。
不確実性がつまりは揺らぎ、メロウになっているのだ。
2.いつか / どこか
Cornelius 『いつか / どこか』 Sometime / Someplace
いつか/どこか、という曲名はどこかの漫才師のようである。
ギターのフレーズが無機質に一定のリズムを刻む上に様々な音が重なっている。上物が逆転している感覚である。
ここでも印象的なギターソロが入っている。これがこの曲は人が行っているということを思い起こさせてくれる。
3.未来の人へ
Cornelius 『未来の人へ』Dear Future Person
先ほど2曲のインパクトが強いためにこの曲の印象が少し弱く感じてしまうことがあると思う。
ただコーネリアスであるということはすぐに分かる。この一見何気ない曲というものを自分の色を付けるということはなかなかに難しい。
この曲に関して言うならば声が歌詞をうたっている。新鮮である。36℃の温もりを得られる。
4.Surfing on Mind Wave pt 2
Cornelius - Surfing on Mind Wave Pt2
MVがとても面白い。沸き立つ波をサーフィンしながらぼんやりと見える光に向かって進む。音と映像二つがどちらの長所を引き立たせている。
進んでいるような、でも逆再生のような音も入っているためにどちらか分からない。ただ見ている光はそこに確実に存在するのだ。
5.夢の中で
ここまで書いて思ったのだが今まですべて公式のMV付きの映像がある。映像と音楽の親和性を早くから知っていた小山田らしいともいえるが。
これに関して言うと何かノスタルジーを得る。シンセの感じも懐かしさを覚える。
すんなりとアクが少なく聞けるいい曲だ。
6.Helix/Spiral
HELIX / SPIRAL - LIVE @ LIQUIDROOM 7/12
前作の曲の雰囲気をまとっている。ただシンセの感じであるとかがより今作のテーマであるメロウさに起因している。
ボーカルの部分でハモリのようになっている定番さもコーネリアスがやると何か新しく、意味がありげなものとなる。
7.Mellow Yellow Feel
キュートなシンセになっている上にそれぞれがそれぞれ一定のリズムを刻む。ボーカルがゆったりとしたものになっているために精密さという印象はそこまでは受けない。
むしろ温もりさえ感じる。打ち寄せて戻るのだ。
8.The Spell of a Vanishing Loveliness
Cornelius - The Spell of a Vanishing Loveliness
終盤のキーとなる曲である。所謂歌ものと呼ばれるやつである。今までだとより楽器の部分にフィーチャーすることが多かったがこの曲になると一歩後ろに下がった支え方を行っている。
特に低音部分の音が心地よい。少し歪んでいるような粘り気のある音。粘着質であるがその粘っこさが歌を支えている。
我々は心地よさというものを求めているのだろう。この曲は音楽でなく我々の求めるものを映す鏡なのだろうか。
9.The Rain Song
アコギが不穏な音として奏でなれている。ただ不快でない。不穏さと不快さはまるで別なのだ。
リズム楽器と呼ばれるものは登場しない。ただそれで完結している。人のリズムとは一定ではない。それと同じようにこれもあえてリズムを刻まないことでメロウさを演出している。
10.Crépuscule
こちらもアコギ中心になっている。ボーカルも入っていない。
オーガニックなんじゃないか、でも違うか、という鬩ぎあいがずっと続くいて終わる。
全体的にBPMが遅めではある。がそれが鼓動のようだ、と聞き終わった後には思うことだろう。