pp響く音

音楽とか自分の経験したこと

車輪が存在するこの都市で

 腹筋ローラーを最近行っている。筋肉は裏切らないとどうやら巷では話題らしい。そういう話とは関係なく、体に付加をかけたいが故にしているだけではあるのだが。これがなかなかに大変である。きついし、気を付けないと腰を痛めてしまう。今日も、正しいフォームをYoutubeで見ながら、車輪を回して肉体を使っている。

 

 

 

 

 

 

 

 インカ帝国は車輪を持たなかったと言われている。もしその頃のケチュア族が私を見たらどう思うのか。回転する器具を手にし、視線の下には小型の映像があるわけだ。少しは驚くと、容易に想像がつく。同時に私もびっくりするだろう。見られながら筋トレを行う経験は初めてであるからだ。

  複数人でその行為を見続ける。その中の若い、好奇心の多い、勇敢と恐れ知らずとが混合する男が近づく。私は少し警戒をする。疲労感がたまりかけているためコンディションの問題があるからだ。いざという時は腕力が必要なのはいつの時代も同じだ。

  どうやら若いその男はスマートフォンではなく、車輪に興味を持っているようだ。シンプル、かつ知らない概念。もし私だとしても複雑な見たことのないものより、単純で見たことのないものの方が興味を惹かれる。自然なことだ。

  そんなことがありつつ運動を続ける。臆していない事のアピールでもあるし、車輪の活用方法を生に見せるのにも十分だからだ。自身の鍛錬に彼らが触れたことのないであろう概念を利用しているのだ、と一種のマウンティングでもある。

  ずっとそれだけを見ている。振動し続ける私を、ではない。その動く支点のローラーである。必死で見ていた。いつの間にか周りの人たちも徐々に近づいていた。私はいないものであった。天井から見ると私を取り囲むように数十人が只々回転の様をみている。祭が半径3メートルで行われているようだ。私は何故かこの状態を冷静に見ていた。そして妙に冴えている頭の中でこのローラーを上げてもいいと考えていた。

 


Pavement - Stereo (Official Video)

 3セットのメニューはここで終わる。Youtubeをここで止める。もう見ることができない都市に思いを馳せる。いい具合に腹筋に疲労がたまっていた。