武田理沙の2stアルバム「Meteoros」を発表した。
武田理沙とは
前作はクラシックとテクノの融合というのがイメージであったものの、2stはどうなったのか。今回はこの2stアルバムを聞いてみた感想を書いてみたい。
全曲感想
01. Meteoric phenomena
3分にたくさんの展開が詰められている。初めの方のゆったりとした音からドラムンベースのような激しい曲調まで。そしてピアノが入ってくる。
まさに彼女のキャリアの紹介として何千の言葉で語るより”聞かす”ことで伝えるようである。
02. ゼロと無限のQ明
前曲からシームレスに続いている。そしてテクノのような曲調に合わせて歌声が入ってくる。
ひと昔前のポップスのような印象を受けるがよりリズムの部分が強靭になっている。ポップな仮面を被っているが、やっていることは手加減がない。
03. 断頭台の灯
サイケなメロディから始まる。どこかアラビアの街にたどり着いたかのような、そんなRPGのような冒険感を覚える。
ただメロディと同時にドラムス(彼女はピアノと同時にドラマーとしても活躍している)の印象も強いために我々の想像する一般的なアラブ音楽の様なものではなくなっているのだ。
04. スーサイドスター
どろどろとした、固体と液体の間のようなつかみどころがない。使っているのはシンセなどだと思うが、だから電子音楽であると断言ができない(これは武田理沙の音楽に共通していることでもあるが)。
その中でしっかりと歌がいわゆる歌としてある。ぱっと聞くとポップス、何なら椎名林檎のようであるともいえるがその例えは違うともいえるのが数回聞くとはっきり分かる。
雑多な音楽というものは総じて理解しにくいものではある。それだけ聞くべきポイントがあるということと同義ではあるのだが。
05. 深海魚
深海というのは宇宙よりも行くのが難しいとも言われている。そしてこの曲は深海魚のような不可思議さが凄く際立っている。
特にベースラインがいい。歌とシンセ、そしてベースの3つで曲の中心ができているために強固な歌になっている。
06. HEADSHOT
元気な感じになっている。ユーロビートみたいな感じになっている。これは直接的なひと昔前のJポップっぽさがある。
07. 揺らぎ
8分以上の大作。この曲と次の曲(15分ある)がこのアルバムの中核を担う。
電子音楽、其れも攻撃力の多めな音楽性ではあるが凶暴ではない。不思議なイメージが浮かぶ。
08. 薬疹
15分ある曲。70年代のプログレかと思うほどの長さである。本来4分ほどの音楽を15分にした、と最初思った。
ただそれは引き延ばして薄くしたといったものではなく密度を濃くするために多くの時間がかかるということだ。
つまりはより大きなスケールになっている。丁寧に絵を描くためにはその分時間を要するのは当たり前なのだ。
09. 沈める月
この曲で最後。この曲だけではないが、低音部分がとても大きく強調されている。
インパクトが低音部分にあるために軸足をそこにおいているために浮遊していながらも我々に根付くような音になっているのだと最後に気づいた。
おそらくこのアルバムは聞くたびに聞いているポイントが変わっていくだろう。それだけ多くの情報が入っているのだ。
アルバムを聞いて
最初、ポップで聞きやすさのあるものだと感じた。ただよく聞いてみるとそれは表皮の部分に過ぎないと気づかされた。こんなにも一曲に詰め込まれているとは思いもしない。
音の密度が濃いのだ。様々な音が入っている。我々はこれら全体を一度には聞くことはできない。ただ、それは喜ばしいことでもあるのだ。なぜならそれは聞きべりしない、むしろ聞くほどに増えていくのだからだ。