pp響く音

音楽とか自分の経験したこと

坂本慎太郎(Sakamoto Shintaro) 砂のようにまとわりつく

 バンドを解散したあと、ソロプロジェクトをする場合前のバンドに似通るか全く別なことする、なんてことが多い。

 ゆらゆら帝国を解散した坂本慎太郎もソロを始めた訳だがゆらゆら帝国の続きをやっているとも全く違うことをやっているともいえる。

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軽やか、スカスカ 


君はそう決めた ( You Just Decided ) / 坂本慎太郎 ( zelone records official )

 明らかにゆら帝のときより歪みの量が減っている。この曲はソロになって初めてリリースした曲になる。MVのアニメーションは坂本自身が一枚一枚手書きで書いている。

 ゆらゆら帝国最後のアルバム”空洞です”の時もそうだったがスカスカである。がもっと言うとバンドの感が薄くなっている。バンド感が薄くなる其れすなわち坂本の成分がより濃厚になっていることだ。実際ベースなども自身で弾いている。自分でやるには限界がある。その限界や制約がよりアイデアを、曲としての響きを加速させる。

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  軽やかな聞き心地が通った後に残るのは爽快感ではない。通った跡がぽっかり空くような虚無を与えてくれる。MVもとても秀逸だ。

パーカッション(コンガ等)の多用


死者より(From The Dead) / 坂本慎太郎(zelone records official)

 コンガとタンバリンがよく目立つ。コンガには一部深いリバーヴ処理がされていて全体のカラっとした雰囲気との対比が、ただただ聞き流す耳障りの良い音楽にさせていない。そのどっちつかずが生きている、死んでいる、その狭間である。

 膝がぐねんと逆さに曲がるような奇妙さと肉体に訴えるリズムだ。実は妖怪だったと言われてもそこまでは驚けない。

 

 ありのまま、奇怪な明るさ


坂本慎太郎 - あなたもロボットになれる

 果たしてこんなに悲観して直接的に揶揄することがあっただろうか。中々にストレートなこの曲はとても歌詞がオブラートに包まれていない。剥き出しの歌詞と嫌というほどの明るさがより無常さ、諦めにも近い感覚がある。明るい曲調なのに気持ちは全く上がらない。それ故に来ている我々は不安や虚無から解放されてはいなく、ロボットにはなれていない何よりの証拠だろう。


ゆらゆら帝国(Yura Yura Teikoku) - ロボットでした(It Was a Robot) (Live at 日比谷野外音楽堂)

 ロボットと言ったらゆらゆら帝国"Sweet Spot"からの一曲”ロボットでした”を思い出す。先ほどの一曲より内的ではあるが明らかに破壊的、エネルギーを感じる。バンドである。現在はよりニヒリズムに寄っている。内側内側に力が作用している。

 

 サウンドとしてはゆらゆら帝国の延長線を行っている。がその力のベクトルが内側へ、そして不偏的になっている。とても面白い。ジミヘンに影響を受けたファズギターは鳴りを潜めより深い、民族的に変化する。表現方法が変わっても坂本慎太郎という人は正に生きる音楽家表現者であるのだ。その部分は変わらない。