サンダーキャットが最新作”It Is What It Is”を公開した。今回はその感想を書いていく。
サンダーキャットという人は実に多くの切り口がある人でどこから書くべきか迷ってしまう。ざっくり言うならば凄腕ベーシストであり、"Otaku"だ。ドラゴンボールが物凄く好きらしく日本に来てマネージメントの人に熱く語りまくって伝わらなかったそうだ。
この見た目の人が
ピカチュウウ!である。よく見ると一枚目の画像の履いてあるものにも亀仙人のマークがある。
強烈であるために語るところがバラバラになってしまうかもしれないが先にその部分は謝っておく。では全曲感想とアルバム全体の感想を言いたい。
アルバム感想
このアルバムを通じて独特の淡さを感じる。80s感があるボーカル、音域の広く(彼は6弦を使っており通常のエレキベースよりも多くの音域が弾ける)動き続けるベース、上物はシンセやピアノが特徴的になっている。それらに淡いリバーヴが共通となって繋がっている。
15曲、37分となっていて長いのか短いのか分からないアルバムである。2分台の曲も多くなっている。全体としてのテーマが淡さである中で1曲1曲の小分けなテーマがあるイメージである。
また様々なアーティストともコラボしている。全体を通じてFlying Lotusがプロデュースしている。
では一曲一曲の感想を述べたい。
全曲感想
1.Lost In Space / Great Scott / 22-26
彼の音楽を知らない方は是非1分を使ってほしい。よく言われるブラックミュージックとは似ているだけで別物であるとすぐに気づくだろう。
メロウだ。初っ端がアルバムにおいての分岐点であるが、きっちり指針が見えてくる。
2.Innerstellar Love
Thundercat - 'Innerstellar Love' (Official Audio)
ドラムのライドの使い方であったりはジャズの風体ではあるがべースがバキバキに動いている。やはりメロウである。メロディーラインやリバーヴがそれを醸しているのかは分からないが、つかみどころがない良さがある。
3.I Love Louis Cole (feat. Louis Cole)
”私はルイスコールが大好きです”とのこと。サンダーキャットと仲がいいルイスコールが参加している。(ルイスコールについては下で。)
ルイスコールらしいドラムのとっ散らかり方を軸にしてベースやエフェクトはサンダーキャットの装いで包んでいる。暴れているのにも拘らずメロウだ。
4.Black Qualls (feat. Steve Lacy, Steve Arrington, & Childish Gambino)
メンバーが異常に豪華である。The InternetのSteve lacy、Steve Arringtonに"This Is America"で有名なChildish Gambinoが参加している。
ディスコ風の音楽に彼の色味がよくマッチしている。ディスコではあるがあまり甘すぎない味付けにもなっているのでくどくない。食べ物の話ではない。
5.Miguel's Happy Dance
ハイハットが真ん中にある組み立て方に聞こえて面白い。ハイハットというリズムの細かい部分を決定づける楽器を強調することで対極にあるメロウな上物(シンセや歌)が引き立つ。言うならばスイカに塩をかけると甘みをより感じるのと同じだ。食べ物の話になってしまった。
6.How Sway
ベースの技巧さの目立つ一曲。ベースなのだがらしからぬ音色をしている。その要因として音色もそうだが、ここまで動くベースもなかなかないのも一因であると感じる。
通常こんなに動くと楽曲が崩壊してしまうのも多くある。が、その危うさを彼特有の淡さに混ぜることで崩壊を免れている。むしろそれがアクセントでよさにも繋がっているのだ。
7.Funny Thing
これは5曲目と違い、ベースが真ん中にある。ベースらしい(といっても彼の音とすぐに分かるのだが)どんと構えているものを土台に展開して言っている。
8.Overseas (feat. Zack Fox)
Zack Foxを知らなかったので調べてみるとヒップホップをしたりしているコメディアンらしい。
穏やかさが支配している。穏やかと支配、共存しなさそうなワードであるが見事にマッチしているのだ。
9.Dragonball Durag
Thundercat - 'Dragonball Durag' (Official Video)
Duragとはいわば海賊がよく頭につけている布を想像してもらうと早いだろう。というか最後の方でそのまま彼が身に着けているのがそれだ。そして曲名に入るドラゴンボール。この曲をMVで作っているあたり愛を感じる。
ネックレスにベジータがいるこのMVも面白いが曲自体も素晴らしい。淡さがこのアルバム、彼の特徴であるが存分に出ている。
10.How I Feel
ゲームのサントラにありそうなシンセが右から左に流れる。テクニックもありながらどこか聞きやすい彼の曲はそのような部分でもあるかもしれない。
11.King Of The Hill
この曲はドラムが左、声が左右、アタック音のないシンセが右に分かれている。
何度も言うが彼の特徴は淡さである。が、その淡さを構成するものは曲によって変わっている。曲によって使う武器が変わっているが同じ印象を受ける。ここが本当の真骨頂なのだと思う。
12.Unrequited Love
低音が心地いい。その中でシンプルである中の旨味を存分に引き出している。
12曲目だとアルバム通じて聞くと疲れがちだが、テーマが一本あるのでそうはならない。曲の時間が短いこともあるが。
13.Fair Chance (feat. Ty Dolla $ign & Lil B)
ヒップホップの方々とコラボしている。揺らげる曲、メロウなビートの上にリリックを乗せている。これだけ見るとLo-fi Hiphopの類と思われるが全く異なる。
14.Existential Dread
タムが印象に残る一曲。さあ来ると思ったところで終わる。何とも憎い終わらせ方に嫉妬する。
15.It Is What It Is
表題であり最後の曲。どんどん音を重ねていく。5分の中に吸い込まれていく感じだ。
このアルバムを聞いてみてほしい。そしてナルトのコスプレをしている彼を見ながら終わりたいと思う。では又。