渋谷系、シティポップ。これらのムーブメントは波のように寄せては返す。
かつてCymbalsというバンドがあった。渋谷系の先端を行く人たちであった。解散してしまったがそのフロントマン土岐麻子は活動し続けている。
その土岐麻子が新たなアルバム"PASSION BLUE"をリリースした。シティポップ、渋谷系のシンボルはどのような曲を今しているのか。
アルバム全曲感想
1. Passion Blue
アルバムと同じタイトル。トラックに対してのヨレが特徴になっている。ただそのよれが玄人に対してのものにはなっていない。よりポップに消化をされているからだ。
後ろのシンセが可愛らしく、かつ爽やかなものになっている。
2. 美しい顔
MVになっている曲。ギターのカッティングとベースが80’Sのディスコのような感じになっているが土岐麻子の都会的なあっさりとした声のミスマッチ加減がいい。
いい意味でダサさというか、定型的なものをポップかつおしゃれにしている。
3. High Line
ドラムパターン(ハイハット)がヒップホップのような感じを受ける。かつ、無理にサビを作るのではなくコーラスを入れることによってこれもまたいやらしさを出さずにオシャレを演出している
4. エメラルド
シンセベースのような面白い音をしている。低音をこういう遊びがあると曲自体に幅が出る。
スネアの音もロールみたいになっていてその対比がいい。
5. RADIO
曲も半分が過ぎた。ここで真っ直ぐな曲を持ってくることによってアルバムのバランスが取れている。
6. Ice Cream Talk feat. G.RINA
G.RINAが参加している曲である。どことなく異国感のあるサウンドに土岐麻子。土岐麻子の力量の大きさを感じざるを得ない。
7. That Summer
美しい顔と同じようなコンセプトになっている。しっかりと定型のツボを押さえることによって懐の大きさを確認できる。
アルバムの前半と後半に置くという所に盤石さを覚える。
8. 愛を手探り
ギターが歪みのあるロックサウンドになっており、さらにの単語の多さが際立つ。
ただドカンとサビに入るのでなくむしろ引き気味に入っているところの脱力感であったり余裕さに打たれる。引き出しが無限。
9. 傘
平さに溢れる。今までの緊張を緩和するかのようなゆるりとした雰囲気の曲になっている。
アルバムも最終盤であると推察できる。
10. Bubble Gum Town
最後の曲である。物憂げなというのか、ブルーさというのかそんな感触の曲である。まるでこのアルバムが終わることを悲しむような感覚であるのかとも思えてくるようだ。
このアルバムは紛れもなくシティポップである。だがステレオタイプな音ではない。むしろそんな従来のことはしない、という土岐麻子の皮肉的なメッセージであるとも考えられる。