不安とは目に見えない。いや寧ろ見えるならば不安と呼べないだろう。じわじわとしかし、確実に喉元に寄って来るあの感じ。そこに不安がある。
今日、不安がこの世を取り巻いている。ウイルスという、目には見えないものはただ病原菌を振り回すだけではない。その影響が政治、文化、芸術、思想、生活、我々人間そのものに回ってきている。明らかにすり減っている。
その中で、4/8にserphがEP”Mirapyd"を配信した。(serphについては下に)
Serph曰く、この”Mirapyd”とはMira(ラテン語で奇跡を意味する)とpyramidを掛け合わせているものである。また、全体的に日本がキーワードになっているそうだ。(Serph自身の解説のリンクは下にある。)
Serphによる『Mirapyd』プチ解説 - Togetter
これは全体的に言える特徴だが、使っている音はエレクトロであるのにメロディーが和風なテイストになっている。ここに親しみを感じる。無機物を組み合わせて一つの呼吸をするものを生み出している。
特に私としては最後の"Banana Bread Pudding"の印象が強い。リズムが左右に分かれてながら、でも相互に支えあっている。音価の長さであったり音色が気持ちよい。またメロディーは人が歌っていないチョップしているよう。かと思いきや続くものもあったり。そして、特に終盤のワウがかかっているようなギターがソウルさを浮かび上がらせている。
なによりも、メロディーが中心にあるのでもなくリズムが中心でもない。並列で歩いているのがおもしろい。
そして、27分を費やすと多幸感を覚える。不安と同じく、多幸感も目には見えない。でもその音が、足音が聞き取れた。少なくとも私はそう感じた。
文章にしておいて何なんだがこの多幸感は文字にできない。私の技術不足もあるが、耳だから摂取できるのだとも思う。この、音楽であるが故の体験ができる喜びに私は震えている。